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新型インフルエンザ狂想曲

 四月に新型インフルエンザが発生して国・自治体あげて既に用意してあったマニュアルに沿って一斉に動き、それに呼応するかのようにマスコミが加わってこの二ヶ月近くインフルエンザ狂想曲が奏でられた。死亡率60%強というH5N1を想定して作られた新型インフルエンザ対策であったが、裏をかくようなH1N1の発生で、大阪・神戸で発生した当初から首長を先頭に既定のマニュアルは今回のインフルエンザの病態にそぐわないという意見が出ていた。そして6/19施行日を定めない形で新たな指針が出された。あくまで秋の第二波に備えてとのことだが、対策の主眼は感染の封じ込めではなく、重傷者等の医療の確保に軸足を移した事になっている。しかしこの意向に時期が明らかでないことが現場で混乱をきたしている。一方で極度の感染防御を取るところがあるかと思えば、極めてゆるい措置を取るところがあったりする。まさに狂想状態である。
 6/15(月)三重県で患者発生、患者は愛知県の東海大学学生で名古屋に居住するが12日(金)夜帰省してからの発生であった。東海大学では既に患者が出ていて休校措置が取られていた。発症は13日であるが、当初はインフルエンザの反応が無く「かぜ」とされていたが、再検により15日新型インフルエンザを確認。両親が小学校に勤務しているとの理由で休校措置が取られた。常識的には濃厚接触者となった両親が学校で児童生徒に接触している可能性は少ないが、休校措置が取られたとある。ネットで見ても児童生徒との接触については何も触れられておらず、両親が学校勤務だから休校だというように見てとれる。些か過大反応のように見える。
 6/19東京で確定診断を得た奈良県桜井市在住の男性が6/19に厚生労働省が出した新たな指針に基づき入院による隔離でなく自宅療養で十分と判断した。これを受け男性は19時頃新幹線という公共交通機関で関西に向かった。19時30分頃、東京からの連絡を受けた奈良県は、新幹線車内での「撒き散らし」を憂慮、せめてグリーン車にと提案したが後の祭りであった(勿論その費用負担についてはマニュアルにかかれておらず、おそらく男性患者の負担になるであろう)。しかしなら県は感染拡大の阻止に動いた。通常なら京都で新幹線を降りて近鉄電車でならに向かうのが普通のルートであろうが、奈良県は京都駅で男性を待ち受け県の責任でならまで患者を移送し、感染症指定病床に入院し、感染の拡大防御を行ったという。既に43例を経験している東京都と、いまだ県内発生は一例のみの奈良の反応がちぐはぐになってしまっている。しかし東京がまるで季節性インフルエンザと同様の措置を取っているかというとそうでもなく、早稲田大学では二人の患者が出た事を受け300人を自宅待機にしたと20日のニュースにある。はたして奈良県の患者の乗った新幹線車内にいた人々の降り立った自治体はこれらの「濃厚接触者」をどう扱うのであろうか。また一方で自宅待機を指示され、一方で感染拡大の阻止目的で感染症法にのっとり入院加療を勧告された男性の胸中は如何に?
 確かに軽症者は自宅待機でよしという指針は示されたが、交通の手段は何を使ってもいいというような、季節性インフルエンザ対策同様の指針が出たわけではない。つまりまだ蔓延状態と国は認めてないわけである。したがって個人的には自宅待機措置を決めた東京の判断は間違いではないが、患者に問診し公共交通機関で帰るということであれば、感染症法の勧告によらない東京都の一般病床への患者負担による入院、しばらく東京都内ホテルでの静養、家族による自家用車の出迎えなどを進めるのが筋でなかったかと思うがどうであろう。今回の行動は廃棄物を他府県に持っていくような対応であったと東京が非難されてもしかるべきかと思う。もっとも国が蔓延状態を宣言すれば一般交通機関の利用も許されるであろう。しかし今回の事件で明らかになったことは少なくとも東京都においては新型インフルエンザと診断された患者が、JR線や東京メトロなど混雑する車内で移動しているという事であり、都民もそれを受け入れなければいけない?ということだ。
 こういった混乱は今回のインフルエンザの病態が想定外であったことと、それを受けての対策がキメラのように存在している事にある。国は、情況をもう少し説明した後で指針を示すべきで、今回のように突然の指針を出すべきではないのではないか。まず、患者の治療に対してはどのような重傷度から入院、それ以下では自宅療養といった指針を出すべきだ。そして感染拡大防止措置は患者を感染症指定病床のような隔離どの高い病床での入院、一般病床での感染拡大防止に配慮した入院、自宅待機といったレベル設定をして今はどの段階でいいということを示すべきだと思う。軽症は自宅待機でいいという判断をする以上、入院も特に陰圧措置をとった指定病床で無ければいけないという情況ではないはずだが、そのアナウンスが未だ無いのは不思議な状態だ。感染拡大防止措置で交通の手段としては当初の案では公共交通機関を避ける事が謳われていたが、これも指定席に座る状態(少なくとも混雑ではない)からよいとする等、段階的に解除していくべきではないか。対策はえいっやーとだせるが、その解除をいかにソフトランディングに持っていくかについてももっと研究すべきだ。その拙い際たるものが今回の6/19の指針の発表だと思う。住民の側も全てを行政の責任にするというのではなく、もっと自主的にモラル(エチケット)を身につける必要がある。自宅待機でいいといわれても、それは入院(隔離)をしないといわれただけのことであるから、自分の住居が東京で無い事を明確に表明し、交通の方法を相談するなり、自動車で帰ることを思いつくなりすべきである。発熱外来を受診するに当たって、患者のつけるマスクについては誰が負担するという規定も無く多くは病院の持ち出しとなっているようである。受診した患者にマスクのコストを依頼したらそれだけで病院クレイマーの思うつぼだという話を聞いた事がある。新型インフルエンザが危惧されるこの時期、呼吸器症状があって病院(医院)という公共的施設を訪れるならマスクのコストは自己負担が当たり前というモラルが育つべきである。そういった常識が育てばclaim自体が意味を成さなくなる。それは今喫煙禁止地域で煙草をすっているのを注意されてclaimを言う人間が殆どいなくなったのを見れば分かる。
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